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    プラスチックとは?

     私たちの身の回りのあらゆるところに存在するプラスチック。もはや現代社会を支える上で欠かせないものですが、これほど普及した今もなお、発展し続けている魅力的な素材です。
     プラスチックの定義は複雑で、一言で説明するのは難しいのですが、日本語で合成樹脂と呼ばれている事からも分かる通り、漆や松脂といった天然の樹脂とは違い、化学的に合成した樹脂を指します。
     その原料は原油から採れるナフサになります。ナフサを加熱・分解する事で基礎的な物質を取出し、合成する事でプラスチックは作られます。そのためプラスチック業界では主に石油由来の高分子物質を主原料とした可塑性の物質をプラスチックと定義する事が一般的です。もっとも近年は植物由来の原料を使用したバイオプラスチックの研究も進んでおり、また天然樹脂を加工したものも一部はプラスチックと認識されています。一概に定義するのは難しいけれど、それだけに大きな可能性を持っているのがプラスチックなのです。

    プラスチックの歴史

     1835年にフランス人化学者のリュニョーが塩化ビニルとポリ塩化ビニルの粉末を作成したのが史上初のプラスチックと言われています。しかしそこからプラスチックが商品化されるまでにはさらに30年ほどの時間を要しました。
     1869年、アメリカの印刷工ジョン・ハイアットが象牙を使用したビリヤードボールの代替品としてセルロースを原料にした半合成樹脂セルロイドを発明した事で、プラスチックの研究が進むことになります。
     そして1907年、ベルギー人化学者レオ・ベークランドが石炭から炭化水素物質を抽出し、世界初の合成高分子プラスチック、フェノール樹脂の開発に成功。開発者の名前にちなんでベークラライトと名付けられたこの樹脂は工業製品にも広く使われ、現在も普及しています。
     これ以降、プラスチックの開発は大きく発展していきますが、現在のような大量生産化に繋がるきっかけとなったのが第二次世界大戦でした。軍事利用のために金属類が不足し、その代替品としてプラスチックの需要が高まった事で産業用プラスチックの研究・開発が急速に進み、終戦を迎えた頃には完全に日常生活に浸透していました。

    プラスチックの種類

    プラスチックは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の二種類に分かれ、熱可塑性樹脂は固形の原料を一度加熱し、液状化、もしくは軟化させ形を整えた後に冷却すると、変形後の形を保つ特性があります。一方の熱硬化性樹脂は液状の原料を加熱する事で硬化させ形づくります。熱硬化性樹脂は再加熱をしても液状に戻りませんが、熱可塑性樹脂は再加熱すると溶けるので再度加工する事も容易です。

    熱可塑性樹脂固形の原料を加熱し、液状もしくは軟化させた後に成形。冷却して形をFIXする。
    加熱すれば何度でも溶けるので、成形が容易。
    熱硬化性樹脂液状の原料を加熱すると硬化して形が固まる。
    一度加熱してFIXしたら、再加熱しても元に戻らない。

    プラスチックの主流は熱可塑性樹脂で、耐熱温度によって、汎用プラスチック、エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアプラスチックに区別されています。

    種類特性代表的なプラスチック主な使用用途
    汎用プラスチック耐熱温度100℃未満
    プラスチック生産量の80%を占める
    ポリエチレン(PE)
    ポリプロピレン(PP)
    ポリ塩化ビニル(PVC)
    ポリスチレン(PS)
    ABS樹脂など
    日用品、雑貨、家電や機械部品等
    あらゆるものに使用されている
    エンジニアプラスチック耐熱温度100℃から150℃未満
    汎用プラスチックより強度や耐久性が高い
    ポリエチレンテレフタレート(PET)
    ポリカーボネート(PC)
    ポリアミド=ナイロン(PA)
    ポリアセタール(POM)など
    自動車部品や電気・電子部品
    ペットボトルなど
    スーパーエンジニアプラスチック耐熱温度150℃以上
    耐熱性の高さや強度、耐久性に
    優れる事から、金属の代用として
    使用される事が多い
    ポリスルフォン(PSU)
    ポリフェニレンスルフィ(PPS)
    ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
    ポリアリレート(PAR)など
    精密機械部品、自動車のエンジン周りや航空機部品、電子基板や耐熱容器など

    他にもエラストマーという硬化するとゴムのような特性を持つ熱可塑性樹脂や、ガラス繊維や炭素繊維を配合した強化プラスチック(FRP)、植物由来のバイオプラスチック、生分解性プラスチックやリサイクル樹脂まで、プラスチックの種類はどんどん細分化されています。また、フィラーと呼ばれる添加物を加える事で、耐久性や耐薬品性、耐衝撃性などを向上させたりと、プラスチックの可能性は無限に広がっているのです

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    こんなところにもプラスチックが使われている!

     スマホのケースやパソコン、耐熱容器や収納ケース、テレビや洗濯機、エアコンなどの家電から、靴やバッグ、文房具まであらゆるところで使用されているプラスチック。こうした一見して判別できるもの以外にも、意外なところでプラスチックは使用されています。
     例えばかつては鉄の塊と言われていた航空機も、今では外装も含めて多くのところでプラスチックが使用されています。金属性のイメージが強い自動車のエンジンでもプラスチックが使用される事が増えてきました。軽量さと強度が求められる宇宙工学の分野でも人工衛星やロケットはもちろん、宇宙服にもプラスチックが使用されています。
     日用品に目を向ければ、牛乳パック等の紙パックのドリンクにもプラスチックがコーティングされていますし、シャンプーやトリートメント、化粧品にはシリコーン樹脂が配合されています。また、多くのチューインガムがポリ酢酸ビニルというプラスチックを原料にしているのは意外な驚きです。

    プラスチックのメリットとデメリット

     多彩な分野で使用されているプラスチックのメリットは、その普及にも大きく貢献した汎用性の高さがまず挙げられるでしょう。様々な形状に成形できるのがプラスチックの強みです。耐久性の高い素材も多く、細かいニーズに応えられるバリエーションの豊富さ、他の素材と較べて軽量な点も、プラスに働きます。比較的安価なため、費用対効果が高いのもメリットのひとつです。
     一方で、耐久性というメリットでもある分解のしにくさがデメリットにも繋がっています。プラスチックが完全に分解されるには何百年もかかるため、プラスチック廃棄物は環境に大きな影響を与えてしまいます。石油由来の素材ゆえに、再生不可能な化石燃料への依存性の高さは地球資源の枯渇にも繋がる問題です。
     こうしたデメリットを解消するべく、現在プラスチック業界全体の環境問題への取り組みとして、植物由来のバイオプラスチックの研究や、PCR樹脂・PIR樹脂といったリサイクル樹脂の研究・開発が急速に進んでいます。プラスチックの利便性と環境保全のバランスを取りながら適切な素材を提供する事は、これからのプラスチック業界の重要なテーマであり、同時にプラスチックの新しい可能性を広げる事でもあると言えるでしょう。