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    気候変動に大きな影響を与える温室効果ガス排出量の削減を目指すカーボンニュートラルや、海洋プラスチック問題の改善など、サステナブルな社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミーを確立させる事が世界的な課題になっている現在。プラスチック産業では製造の過程で排出される二酸化炭素を削減するため、環境配慮型プラスチックの重要性がますます高まっています。そんな中、植物由来などの天然資源を原料とする事で石油の使用量を削減し、二酸化炭素の排出量を抑えたバイオプラスチックと共に、大きな注目を集めているのがPCR樹脂・PIR樹脂といったリサイクル(再生)プラスチックです。プラスチックの廃棄量削減やリサイクル材の使用については、欧米を中心にさまざまな法整備が進められてきましたが、日本でも2022年にプラスチック資源循環促進法が施行された事で、プラスチック・リサイクルへの取り組みが活性化しています。

    リサイクル樹脂の種類

    プラスチックのリサイクル方法には廃棄されたプラスチックを溶かし、新たなプラスチック製品に加工する「マテリアルリサイクル」、廃プラスチックを化学原料やガスに分解し再利用する「ケミカルリサイクル」、廃プラスチックを焼却する際に発生する熱をエネルギーとして活用する「サーマルリサイクル」の3つがあります。リサイクル樹脂が該当するのはマテリアルリサイクルです。リサイクル樹脂には家庭廃棄物を使用したPCR(ポスト・コンシューマー・リサイクル)樹脂と、産業廃棄物を使用したPIR(ポスト・インダストリアル・リサイクル)樹脂があります。どちらも廃棄物を利用したものですが、生産工程やその難易度に違いがあります。

    家庭廃棄物を利用したPCR樹脂は、リサイクルの過程でさまざまな樹脂が混在しているため、まず樹脂の種類を選別しなければなりません。また汚れや残渣物を取り除くための洗浄工程も必須です。同じ種類のプラスチックでも製品によって物性は違ってくるので、それを踏まえた上で、一定の品質レベルを保つ工夫も必要になります。

    プラスチック製品の生産過程で発生する端材や不良品、機械に残った原料を利用するPIR樹脂は、汚染率も低く、品質も安定しているので、そのまま別の製品への流用が可能な点がメリットです。分別や洗浄といった行程をスキップできる分、タイム・パフォーマンスに優れています。

    どんな樹脂がリサイクルされる?

    リサイクルが可能なプラスチック材料には、4大汎用プラスチックのPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)の他、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネート)などがあります。プラスチック生産量の多い樹脂をリサイクル樹脂として再利用する事で、より効果的に温室効果ガスを抑制する事が出来ると言えるでしょう。リサイクルされた樹脂は食品容器やボトルといった日用品の他、PETのように飲料ボトルだけでなく、ポリエステル繊維として再利用されるもの、また文具や事務用品、公園の遊具やベンチ、家電やコンテナなど様々なものに再利用されています。

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    リサイクル樹脂のメリットと課題

    日本でのリサイクルの主流はサーマルリサイクルで、欧米と比べてマテリアルリサイクルの比率が低く、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、この比率を上げる事が肝要になります。日本は廃棄プラスチックの輸出大国でしたが、その主な輸出先であった中国が2017年に廃プラスチックの輸入を禁止した事を皮切りに、各国での輸入規制が強化された事で、国内での資源循環が喫緊の課題になっています。そうした流れから、プラスチック産業においてリサイクル樹脂の開発は重要なテーマになっているのです。

    リサイクル樹脂は製造システムの構築等にまだまだ向上の余地がありますが、一方で従来の石油由来のプラスチックほど原油価格の高騰の影響を受けにくいという点はメリットになります。また、地球環境改善に直接関わるリサイクル樹脂を使用する事は、製造するプラスチック産業だけでなく、利用する企業にとってもイメージアップに繋がります。

    リサイクル樹脂を活用する企業の取り組み

    例えばCo2の排出量が多い自動車産業では、Co2排出量削減のためのEV化や、新車製造の25%にPCR樹脂を使用する欧州ELV指令の影響もあり、リサイクル樹脂やバイオプラスチックなどの環境配慮型プラスチックを取り入れる動きが活発化していますが、自動車産業だけでなく、リサイクル樹脂を積極的に利用する企業は数多くあります。

    コニカミノルタでは、10年以上前から再生プラスチックの研究・開発に取り組み、自社で開発したPCR樹脂を自社製品に使用するだけでなく、PCR樹脂の製造・販売もしています。

    リコーも再生材利用率50%のA3カラー複合機を開発するため、リサイクル樹脂の製造から取り組み、実現しました。

    シャープでは、家電リサイクル法をきっかけに、自社製品の循環型リサイクルシステムを構築し、自社のエアコンや洗濯機などにリサイクル樹脂を活用しています。

    ライオンネスレ日本は、プラスチック製のパッケージの100%リサイクルを目指し、積極的に活動しています。

    日本マクドナルドでは、ハッピーセットに付属するおもちゃを回収し、自社店舗のトレーにリサイクルしています。

    ファミリーマートでは容器やカトラリーにバイオマス樹脂やリサイクル樹脂を使用している他、海洋プラスチックゴミを使用したPCR樹脂で製造した買い物かごを導入しています。

    あらゆる産業において、プラスチックとは無縁ではいられません。プラスチックが身近なアイテムであるからこそ、企業が積極的にリサイクル樹脂を利用し、環境改善に取り組む事で、社会全体の意識向上にも貢献できるのです。